敷地は、福岡と佐賀平野を分ける背振山地をバックに水田地帯が拡がる一画にある。
都市部では得られない風景だが、日常生活の中でその拡がりの気持ち良さに
住空間を通して気付くことは少なく、見落としがちである。
そこで建物は、水平方向に拡がる風景をパノラマ状に眺めることができるコンセプトとした。
また、コストダウンを図るために総2階建てとし、各々の階からパノラマ的風景を感じられることを目標とした。
そのため建物の構造は拡がりを得る為にコア状のベースからキャンティレバーによって持ち出されたリングが
コアを取り巻く単純で抽象的な形態へと収束していった。
リングは各階とも高さが違う3連のリングになっておりキャンティレバーによって浮遊感を醸し出している。
結果として建物は、自然の中に人工物が対峙しているように思われるかもしれないが、
自然を眺めるための結果であり方法論的アプローチは、あくまで自然との関係性の構築である。
プランは1階コア部に主寝室、WIC,将来的に子供室として2室に分けられるゲストルームをホールに対し並列に配置。
コアを取り巻くリングとの間にポーチ、エントランス、ホール、階段、WCデッキ、中庭などの内部と外部が入れ込まれている。
2階コア部にリビング、ダイニング、サニタリー、パントリーを配置。
リングとの間にキッチン、ユーティリティ、階段、中庭、デッキなどの内部と外部が入れ込まれている。
コアとリングとの間のスペースは、内部と外部を繋げる中間領域として機能し
四季折々の背振山地や水田地帯の風景を取り込みながら内外部が交錯している。
自然との関係性の構築という目的以外に建物が自然の中において詩的な佇まいとして表現できたのではと思っている。
敷地面積 293.0㎡(88.6T)
延床面積 115.9㎡(35.0T)
竣 工 2016年
施 工 なかむら住宅
構造設計 黒岩構造設計事務所
Photo Koji Okamoto