2009.03.21
未来の建築家 つづき2
男女クラスになるために文系に進むべきか
むかしからの憧れであった建築家になるために理系を取るべきか
悩みに悩んだ挙句、
自分の気持ちは五分五分となりました。
ちょうどその頃、いつも通学の途中で通る唐人町に
むかし、早稲田の哲学科を出て、坊さんをしていたおじいさんが
高嶋易団をしており、よく当たるという噂をおふくろから
聞いていたことを思い出したのでした。
よし!こうなりゃ、どうせ五分五分だし
いっそのこと、ボクの人生そのジイサンに賭けよう!
と思ったのでした。
学校からの帰り、いつものように唐人町のバス停で降り、
商店街を通り抜けた一軒家に向かいました。
古びた木製のドアの前で、勇気を出してチャイムを押すと
しばらく間をおいて中から30代の女性が開いたドアの間から顔を出し
用件を聞かれました。
「進学についての相談です!」と応え、しばらく待たされた後、
2階に通されました。
少し薄暗い空間の中に、眼光鋭い70代くらいの痩せた
ご老人が座っていました。
今後の進路について、不純な動機を伏せたまま
理系か文系か迷っていることを話すと
「ではきみは、文系を選択して将来、何になりたいの?」と聞かれました。
文系は男女クラスになりたいためでその先のことは当然のことながら
なーーんも考えていないので答えられません。
苦し紛れに、将来のことはわからないが文系のほうが点数が良く、
九大の建築は難しいので文系にしようかと思っていることを伝えました。
すると
「きみ!人生は学校で決めるのではなく、やりたいことで決めるんだよ!」
と言われ
「九大が難しければ、鹿児島大学の建築学科だってある。
あそこは歴史が古くたくさんのりっぱな卒業生を輩出しているし
とにかく、入れるところを探した方がいいと思うけども-----------、
まあとにかく見てあげよう」
ということで座っている前の台に置いてある箸立てから長い箸をすべて
取り出し、両手でもみながら呪文を唱えだしました。
オンサラバユ、オンサラバユ、ヒャッ、ヒャッ!ヒャアーーー!!!!
キミハ、キミハ-----–ケンチクヲココロザセー—-!
はぁ—-、理系に進むことが決まった瞬間です、
ボクの人生の中でもっとも大きな選択だったのでした。
人生にもしはありませんが、文系を選んでいれば、当然、建築家にはなっておらず
その結果、うちのスタッフはどうしていたでしょうか?
カサギは、どこか住宅系のアトリエに入り、もしかしたら松山くんのところだったかも
ヒラノは、矢作さんのところの面接を受けて採用されていたかも
フジヤマは、某大手組織事務所のマンション部門の担当者としてビジネススーツに
身を固め、東京のビルの谷間を颯爽と歩いていたかも
アリヨシは、いまだにプラプラしていたかも---------------などなど
そして、たくさんの施主とのめぐり合いもなく、みなさんは他の建築家の方に頼まれ
また、別な形の建物が建っていたのだろうと思います。
そうやって考えると、人間の周りには人生の選択肢に伴う数多くの、関係性のゆらぎ
みたいなものがあり、そのゆらぎが幾重にも重なり、時間とともに常に変化し
人間と社会との関係に影響を与えているのだと思いました。
占ってもらった後、最後に
「きみは自然を抽象化して表現できる能力がある」とも言われました。
この言葉はいまだに心の中に強く残り、ボクの建築におけるテーマとして
ずっと気になっていることです。