2014.04.25
第2回建築勉強会
きょうは午後7時より第2回建築勉強会のプレゼンテーションを
リズムデザインの井手健一郎くんが行ないました。
沖縄で建てた住宅「HOUSE IN TOMIGUSUKU」について
沖縄の風土、伝統的建築様式、現代の状況などを分析しながら
新しい沖縄の建築としての在り方を伺いました。
以前から建築という行為はクライアントに対する翻訳作業というポリシーを持たれ
今回においても開口部と気候(気温、風速、湿度)との関係性について
世界中の気候の中から沖縄の気候と近いところを取り出しそこの開口部の在り方
について分析を行ったということでした。
物事を常に客観的に捉え分析的にアプローチするという方法論は理解できますが
果たしてほんとうに客観的だろうか?という疑問が生じます。
「客観的」の意味を辞書で調べると
( 個々の主観の恣意(しい)を離れて,普遍妥当性をもっているさま)という意味です。
分析的アプローチで言えば、開口部と気候との関係性も
それが一面のみの取り出しであるならば恣意的選択となり
すでに客観的であることが疑わしくなってきます。
開口部の成立は気候だけではなく社会文化、習慣、生活様式が絡んでおり
気候との関係だけで論ずるのは無理であり、そこをさらに分析することは
1プロジェクトの領域を越え学問の範囲に入るのではないでしょうか。
したがって分析的アプローチを強調されるほどぼくには何か
本質からそれた修辞に感じるのですが-----–。
というのもその結果としての開口部の大きさ、腰の高さなどについて
それがどのように反映されているのかの説明が十分ではなくわかりません。
沖縄の伝統建築が台風に備え敷地周囲に石垣を張り巡らせていることから
外部に対しスケルトンとしてのコンクリート造の外壁を造り
内部に木造のインフィルを設定したことが
新しい沖縄の建築としての伝統に対する解釈ということのようですが
コンクリートのスケルトンと木造のインフィルは目新しいことではなく
混構造として昔から行われています。
そこでどういう部分が新たな切り口での沖縄建築の新しい在り方なのかが
ボクにはわかりませんでした。
また今回の話において建物の形式性という言葉が上がりましたが
(ボクは形式という言葉は個人的に苦手です)
形式とは辞書で確認すると「認識の普遍妥当性を認識形式に関して吟味する立場。
美学で、感覚的要素の意義を否定し、形式に美の原理を認める立場。」と書いてあり
井手くんにおいては形式を分析的アプローチの結果、
現代沖縄建築に対する普遍性を持ったものとして
意味づけられているように感じます。
形式という言葉において建築家の千葉学氏は「そこにしかない形式」という文章で
「特異なプログラムと特徴的な場所から生み出された建築は、
もちろん特殊解のひとつである。
でも、その特殊解をつくることの中に、何らかのルールを見つけたいと。
どこか普遍性を持った形式であって欲しい」と述べられており
そのルールを見つけ出す作業に個人の直感が働くことは
創造的思考を行っている者にとってアナログ的人間性が現れる部分であり
形式についての解釈も様々な見方があると言うことができます。
形式をルールを見つけることの結果という表現ならば賛成なのですが------。
また、建築の自由さという問題------
建築の自由さを求めて空間が均質的プランになってしまうことに対し
デザインとは自由に選べる場を作ることであり、
僕らは場を作らなければいけないという反論—-など。
自由と均質性についていろいろと考えさせられる言葉が上がり、
とても面白いと思いました。
1回目のボクのプレゼ時に彼は東京の建築家が概念性ばかりを求めており
自分は理想的には概念性と物質性の両方を求めたいと言われていましたが
予算が厳しい場合そのどちらを取るの?と聞き返すと
物質性という返事が返ってきました。
彼は概念性を重んじる建築家と思っていたので意外に思いました。
東京の建築家たちとの交流を通し物の見方の視野が広い結果
井手君のなかでもいろいろな思考をしながら試行錯誤を繰り返されているのだと思います。
それをきっかけにボクも概念性と物質性について考えるようになりましたが
井手くんは高い感性の持ち主ですから
もっと直感と分析的アプローチを組み合わせた方向で
進めて行っていいと思うのですが-----。
又は自分の感性を通した直感なるものをむしろ語ってくれた方が
より本質が見えてくるような気がします。
勉強会では住宅としての質に対する評価は高く
個人の思いとは裏腹に分析的アプローチという方法論の内容に対する疑問を感じた方が
多かったのではないでしょうか。
分析の過程を数多く見せることより、
結果の伴わない(または関連付けが説明しづらい)過程を削り、
もっと整理された結果の伴う過程について相互の関係を詳しく語って頂けると
よりわかりやすくなったかもしれません。
—それにしても1回目のボクの時は、
スタッフ全員から感想を聞くような設定で20人ぐらいから集中攻撃を浴びましたが
今回は代表だけが発言するだけでやり方が違ってました-----ズルーーーイ!!
全員に発言させるべし!!
次回、第3回は6月27日でNKSアーキテクツの末廣香織さんです。