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建築家の柿沼守利さんが26年前に設計された宗像名残荘が
建築プロデュースのプロトハウスさんの企画により
この度、別のクライアントに引き継がれることになり
その一部改修を終えた建物を拝見させて頂ける機会を得ました。


(堂々とした門構えと屈折して連なった車庫スペース、梁によって屋根が
かなり前に持ち出されています)


(むくりのついた屋根は、コの字型プランに対し寄棟となっており
 庭の緑の中にひっそりと佇んでいながらも堂々たる風格が漂っています)


(エントランスは引き戸ではなく開き戸でセンターにラッチを回すドアノブが
付くのは師匠の白井晟一に合わせています。)

ここを建てられた棟梁の川原氏にも直接お話を伺うことができました。
柿沼氏から渡された図面は5~6枚のみでそれ以外に師匠の白井晟一の
図面集を手渡されこのようにやって欲しいと言われたそうです。
ディテール等は施工図を作成しながらの確認作業で、
設計料の1/3はもらってもいいほどだったと苦笑されていました。
(大学を出て間もなく、30万円する白井晟一全集を月賦で購入し今も大事に
持っていますが白井氏の図面はすごい密度で詳細図が描かれています)

構造体にはクリ材を使用し、内部化粧材はホワイトアッシュが使われています。
外観から見るとすべて真壁造のように見えますが、外は大壁で柱・梁部分に
化粧材が使われており内部が全て真壁になっています。

中庭を囲むように土間スペースが巡るコの字型プランになっており、
瓦を貼ったこの土間スペースがこの住宅の大きなポイントで
この部分に大きなスペースが割かれ、
地盤とのレベル差を抑えるような工夫がなされています。

土間スペースの奥行きが1間(たぶん)、クリ材による300φの列柱に
グレーペンガラスがはめ込まれた外部との境界からの軒の出が1500mm。
部屋からはかなり奥行きのある構成になっています。


(居間スペースは茶室と繋がっており、天井は寄棟の形状に合わせた段状の
上がり天井で間接照明が入っています)

コの字型に配置されたプランは、現在のライフスタイルなどの家族像からすれば
かなりパブリック的な部分が優先されているため使いづらいところも
あるかもしれませんが、住宅というより美術館のような建物で
ディテールや素材に対し相当な労力が費やされています。

庭への開放性という部分においては、
嵌め殺しガラスを使用してもやはり閉鎖感があり
本来の伝統的日本住宅の開放性とは違うため
リラックスできるような感覚とは違う住宅との印象を持ちました。

師匠である白井晟一氏の住宅を実際に見た経験がないため
白井さんとの相違などよりもこの住宅を通し白井氏について推し量るしか
ないのですが、白井氏の住宅というのは日本の伝統的なものと
氏の留学先であったドイツを通した西洋的なものがミックスされたもので
むかし、よく話題になった村野藤吾氏との比較論(村野の軽さに対し
白井の重さなど)についてもう一度、読んでみたくなりました。

    

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