2018.10.24
野武士の世代
建築家を志すきっかけとして我々世代が影響を受けたのは「野武士の世代」
だろうと思います。
当時、小住宅等を雑誌等に盛んに発表していた建築家たち
石山修武、長谷川逸子、室伏次郎、毛綱毅曠、相田武文、六角鬼丈
渡辺豊和、安藤忠雄、伊藤豊雄、山本理研などをさして
モダニストであった槙文彦氏が語ったものとされています。
「野武士」という用語を調べてみると特定の主人に仕えない武士とのこと
のようで当時建築の学生であった我々にとっては
実に個性的でユニークな存在であり、学生運動に影響を受けた反体制的な
ところがあったと思います。
今回、これまで購入した建築関係の本や送って来られた建築の定期刊行物などで
パラパラめくっただけであまり読んでいなかった本をリストアップし
きちんと読んでみようと読み進めていいたところ
その中に藤森照信氏による「野武士の世代」について書かれた文章を発見
これはTOTO通信の藤森氏の連載記事で「現代住宅併走」という題名ですが
藤森氏が著名な作家による住宅を訪問しての印象を書いているもので
この回は三分一氏の住宅でした。
以下ご紹介
ストーン・ハウス雑誌発表のときの解説には次のように書いていた。
「化石燃料系素材の使用を最小限にとどめ、木材、石などの自然素材と空気や雪
といった自然要素との相互作用によりその潜在性を最大限に引き出すような
建物自体の姿形を導くことができるならば、そこには地球との知的な関係を
保ちながら暮らしていける場所が生まれると考えている。」
時代の違いかもしれないが、私らのような「野武士の世代」は、若い頃、
こういう文は絶対に書かなかった。
ここでうたわれているのは時代と社会の正論で、
こういう内容は新聞記者へまかせておけばいい。
野武士たちは時代と社会から建築を説明するのはダメと決めていた。
建築を自分の内側から説明したかった。
私が、オッと思ったのは、雑誌発表時の正論ではなく、
現場で会って直接聞いた、”半分地中に埋まる”とか”地球のディテール”の
話の方だ。地球ではなくて”地のディテール”とか
せめて”大地のディテール”程度にしてほしかったが、
とにかく、土に埋まるとか地のディテールという言葉からは、
ピラミッドに取り組む設計者の身体が感じられる——–。
次に同じシリーズでまた、藤森氏による野武士発言を発見したので
ご紹介
この回は吉田研介氏でした。
後に「野武士」と呼ばれる私たちはの世代は、磯崎新世代に兄事しながら、
そのすぐ下の宮脇檀、黒沢隆、吉田研介などには近寄らないようにしてきた。
私たち世代で最も鼻の利く石山修武がそのあたりを仕切り、
リードしたのだと今にして思うが、———
断片的ではありますが「野武士の世代」の臭いみたいなものが感じられる
文章で非常に面白く思いました。