2023.06.17
天満宮見学会
藤本壮介氏設計の太宰府天満宮仮殿とアトリエサンカクスケール設計(村上氏)の
祖霊殿をJIA主催による見学会で見てきました。
先月から神社づいていますが、最近お寺では納骨堂の建て替え、神社では納骨堂の新築が
増え、これまでと違い寺社仏閣専門の設計に頼まれずに新しいあり方を求め
新進気鋭の建築家に頼まれるケースが増えているように思います。
コロナ禍によるたこつぼ生活から抜け出し、積極的に見学会に出るようにしていますが
久しぶりに知り合いに会うとみんな「老けている!!」ように感じました。
それは浦島太郎ではなく、自分も老けていることの裏返しで少しショックを受けました。
ところで天満宮の説明によれば菅原道真公を祭っている天満宮系列の神社は
全国に1万ヶ所以上あり系列の多さでは3本の指に入るとのこと。
それの総本山が太宰府天満宮ということで、近くにありながらこれまで関心もなく
改めて立派な神社だということを再認識させられました。
またアトリエサンカクスケールの村上氏が設計事務所として
太宰府天満宮のメンテナンスを含めたデザインコーディネーター的役割を果たされていることにとても素晴らしいことで感じ入りました。
建築家としてこれからの新たな関わり方として必要だと思いました。
その流れの中で今回、鬼すべ堂横の敷地に祖霊殿付属御霊舎を設計され拝見しました。
周辺環境を踏まえ建物のヴォリュームを抑えた主張しないランドスケープ的建物のあり方は
説得力のあるものでした。
内部については残念ながらまだ公表許可が下りていないためご紹介できません。
その後、歩いて天満宮仮殿に向かいました。
天満宮本殿は改修工事が3年近くかかることから
本殿の手前に仮設で仮殿が建設されました。
竹中工務店の施工で工期は3ヶ月というスピードで完成したそうです。
手水舎で手を清めますがアジサイの花が浮かべられており
こういうのを見たのは初めてで感心しました。
門をくぐると本殿前に仮殿が鎮座しているのが見えます。
仮殿は藤本壮介氏による極めて前衛的現代建築にも関わらずまわりの環境にとても
馴染んでいることに驚かされます。
前傾した屋根の上部には想像以上のボリューム感がある森のような樹々が植えられており
5mほどの高木部はあらかじめ下部が掘り下げられたポッドになっており
それを格子状に組んだ黒く塗られた木の下がり曲面天井により隠されています。
先端部の横引き樋の処理は巧妙で賽銭箱の両側に立てられた二つの円柱の中に落とし
さらにその水を途中に繋がられている横引きパイプによって裏側へ排水される仕組みに
なっています。この地域は土を一切掘っては駄目だそうで建物は既存地盤の上に
置いた状態で建てられているそうです。そのため排水も土の下を通すことは不可の為
上述のような納まりになっています。
仮設建築物ということを全く感じさせない洗練された建物です。
JIA主催による見学会ということもあり普段上がれない壇上での説明とお祓いを受けました。
現代建築とうまく調和することでこれまでの伝統性に新しい風が吹いたように感じました。
2023.05.29
HOUSE W 受賞お祝い会
先週の土曜日、「HOUSE W」の受賞お祝い会が開催されました。
フォルツア(建築プロデュース)企画物件で
「HOUSE W」が福岡県美しいまちづくり賞住宅の部の大賞及び建築九州賞のJIA特別賞受賞により
施主Wご夫妻及び設計者-平野公平設計事務所、施工者-久木原工務店3者をお祝いする会をフォルツア登録建築家の皆さんと開催しました。
当初、関係者のみでのお祝い会を行う予定でしたが、これまでフォルツアが手掛けられた
300軒近い物件において受賞は初めてということもあり私の方で盛大に行う提案をしました。
わたしもフォルツア物件を何軒か手掛けていますが
フォルツアでは施主に対して寄り添う姿勢が徹底されており、
施主は設計者の良き理解者でもありながら生活に対するクオリティが求められ
それをクリアした上で建築を第三者の評価に値する訴求力のある社会性まで高めることは
中々難しいことだと思っています。
したがってこの度2つの賞を受賞されたことはたとえ地方の賞であっても素晴らしいことで
お祝いの場を設けたいと考えました。
また、登録建築家の方々にお祝いして頂くということは、皆さんライバルでもあり
複雑な気持ちもあるかもしれませんが、良きライバルを讃えることで
私を含め自分自身のモチベートに繋げていって欲しいと思いました。
その結果、35名の登録建築家の中で17名の方々に集まって頂き開催させて頂きました 。
忙しい中、ご列席頂きみなさん本当にありがとうございました
司会・進行役は私が行い、会場のセレクト、花束の準備等は大石アトリエのOB達に手伝って
もらいました。
会場は国体道路に面する大名のイルカセット最上階のイタリアンレストランで
1部(受賞会及び設計者へのトークインタビュー、作品紹介、花束贈呈)と
2部(食事会―関係者へのインタビュー、祝辞)に分かれた
計3時間の催しをひとつの会場で行うことができ便利でした。
基本的にこちらで全て筋書きを用意し事前に役割指名及び内容についての確認、席次等
約1ヶ月の準備を経て臨みました。
平野君の15分程度の作品紹介は、敷地環境から建物の構成に至るはなしは非常に論理的で
わかりやすく説得力のあるもので受賞に値するものであることに納得がいきました。
第1部での設計者の平野君への松田くんからの花束贈呈(ラテン系らしい熱いハグ!!)
第2部では食事をしながらクライアントであるWご夫妻へインタビューを行いましたが
イームズ夫妻によるケーススタディハウスの話をされ、
やはり施主の意識の高さ、理解度が必要だと痛感しました。
「HOUSE W」は最近の平野くんが設計した住宅の中で真向いの神社の御神木との関係性から
組み立てた構成的な手法が際立っており、当アトリエ時代の担当物件の頃の平野くんが
ベースでその後の表現として構造的な架構がミックスした進化を遂げていると思いました。
2023.05.25
鳥飼八幡の見学 その2
壁がないという純粋な柱と梁だけの構造がこの拝殿ではより清冽な雰囲気を造り出して
います。床の仕上げは杉柾の赤身だけを選んで敷かれてあり非常に美しい仕上がりです。
柱と梁の受け方がミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸を彷彿
(F邸の方は鉄骨のH鋼柱が外に出してあります)とさせます。
この拝殿がミニマムに美しく見えるのも柱、梁の接合部と床の取り合いのディテールによる
ものが大きいと思います。
(柱、梁接合部)
見学会にはクライアントである神主の山内氏も立ち会われ企画段階でのお話を伺うことが
できました。
旧神殿は大社造りの妻入りであったそうですが、今回の遷宮に際し神明造りの方が
より現代に合ったシンプルな形態である為、全国的に八幡宮では例がない中
氏子の方々への説得をかなり時間をかけ行われたそうです。
したがって八幡宮では唯一の神明造りの神社となります。
神殿は専門の方に頼まれたそうで伊勢の本宮と同一形状ながら相似的に少し大きいそうです。
ただ神明造りの一番象徴的な棟持柱については伊勢神宮のものより細いように思います。
また伊勢は茅葺ですがこちらは法的に規制がある為、銅板葺きになっています。
神殿と拝殿との取り合い
こうやって見上げると棟持柱も1本物としては立派なものですが伊勢がいかに大きいか
後で写真を見て気付きました。
それにしてもこれだけのものをまとめられた二宮氏は、12年前に福岡に戻って来られ
これまでこちらの建築仲間内では全く無名の存在でしたが
今回、はじめてお花見の会と見学会で2度ほどお話を伺い
とても誠実、丁寧な対応に非常に好感を持ちました。
素晴らしい力量を持たれた方で今後、九州の建築界を引っ張って行かれる建築家として
楽しみにしています。
2023.05.14
鳥飼八幡の見学 その1
この度、柳瀬氏の依頼により鳥飼八幡を設計された二宮氏の説明を受けながらの
プライベートな見学会に行って来ました。
そもそも、松山将勝氏が二宮氏の師匠である新関氏と懇意にされており
氏をJIAの講演にお呼びしたところ新関氏より二宮氏の紹介があったとのこと。
その講演に出席されていた二宮氏を柳瀬氏が花見に誘われ、今回の見学会に繋がりました。
コロナ禍においてはこのような人と人の繋がりが全くなく
我々の仕事柄、このような人と人の繋がりによる見学会の実現は極めて貴重だと思いました。
鳥飼八幡は明治通りに面した地行~今川橋間にあり、昔から高校の通学路にあるため
知ってはいましたが、鳥居含めた参道が反対の表側にあることすら知りませんでした。
参道側、よく見ると参道の中心軸と新しく建て替えられた本殿の中心がずれていますが
建て替えに際し昔の中心軸に戻したとのこと
どうやら昔の中心軸に太陽の夏至軸が合致しているそうです。
既存の本殿を解体し新たに建て替えられた拝殿及びその奥に神殿が配置されています。
拝殿は躯体コンクリートの上に茅葺の仕上げが施されており原初的であり現代的でもある
マッシブな塊として表現されています。
拝殿は同心円状にストーンサークルを彷彿とさせる巨大な10本の石柱がスラブの垂直荷重を
支えるように配列されています。正面に拝殿と対になった神明造りの神殿があります。
西方向と東方向は対称になっており木製格子戸の大きな開口部を開け放つことができます。
西側に対拝殿が配置されています。
拝殿の西側に配置された対拝殿はコンクリートでクローズした拝殿と違い
一転して和風ミースを彷彿とさせる木架構とガラスで構成された非常にミニマムな建物に
なっています。
この対比感は痺れます!
つづく
2023.05.04
笹丘のオープンハウス
昨日、糸島の引き渡しの後、大学の後輩でアトリエKomaの松井君が設計した
笹丘の住宅のオープンハウスに行って来ました。
矩形の敷地ながら高低差のあるグランド及び南側に向かって上がっていく周辺環境の状況
に対し思い切って対角線状に土地を切り土し、その結果できた二つの三角形のうち
南側の上がった方(写真左手)に住宅、残りの下がった方(写真右手)を空地として計画。
住宅としての一般的な建ち方である南側への庭の確保という常識に固執せず
土地の状況を読み取った結果、建物を南側に寄せ北側を庭にするという方法が取られています。
また、その北側庭を明るくするために建物の形状を北側勾配屋根にし
そのアウトラインに基づいた平面計画及び断面計画が採用されています。
特筆すべきは周辺環境の状況から太陽光の取り入れ方について建物の形状が決められ
内部空間においてはその太陽光の北側庭からのバウンドを考慮した断面計画や仕上げ等が
採用されており一貫したコンセプトが内外共に貫かれていることだと感じました。
内部の空間全体を覆う素材のままの傾斜天井は北側庭からの太陽光のバウンドを受け
室内の暗さを解消していますがそれは素材がたとえ金属であっても
現象としてはナチュラルであれば決して冷たいものではないという印象を与えます。
また開口部に柔らかい素材としてのカーテンが取り付けられているのもいいと思います。
当日は彼が教えてる九大の学生さんがたくさん来られていました。
(顔を曖昧にうまくできずすいません)
2階は子供室だけで1階と片流れの空間を通し各々の気配を感じれるように繋がっています。
このシーンを見るとアトリエワンのガエハウスを思い出しました。